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第6話  記憶の継ぎ目

last update publish date: 2026-07-07 20:25:15

同窓会の会場は、複合施設の中でも最上階に位置する展望ラウンジだった。藍都市街を一望できる広々とした空間に、懐かしい制服の写真や当時の卒業アルバムが展示されている。

「こんなに来てるんだ……」

美佳は小さくつぶやいた。

見覚えのある顔ぶれがちらほら。かつての教室で過ごした記憶が断片的によみがえる。

だが、どうしても繋がらない。自分が卒業式で誰と話したのか、いつ彩音と最後に会ったのか、記憶にぽっかりと穴が空いていた。

「美佳?どうしたの、顔色悪いよ?」

彩音が心配そうに覗き込む。

その視線に応えようと、美佳は笑顔を作った……が、唐突に会場の照明がチカチカと明滅した。

ピピッ、ピピピ……

場違いな電子音。誰かのスマホかと思ったが、誰も取り出していない。

次の瞬間、展示されていた卒業アルバムのデジタルパネルに、見覚えのある画面が浮かび上がった。

> 【アンケート:第0区画データが検出されました】

【回答者ID:M-319A】【感情データ同期完了】

「……!」

美佳の背筋が凍りついた。

(これ……私の、ID!?)

慌ててスマホを確認しようとした瞬間、横からスッと差し出された手が彼女の手首をとらえた。

「久しぶりだね、三枝さん」

低く、落ち着いた声。

そこに立っていたのは、長身の青年。黒縁眼鏡に整った顔立ち。制服の頃から目立っていた朝倉純あさくらじゅんだった。

「……朝倉くん?」

「僕は、こうなることを少しだけ予期していたよ。君も、もう気づいたはずだ。“記憶”が改ざんされている」

声をひそめる彼の口調は、冷静ながらも焦りを含んでいた。

美佳はわずかにうなずいた。

「アンケート……何かがおかしい。でも、私には何も分からなくて──」

「分かってる。だから、教えるよ。

“あのアンケート”はただの質問じゃない。

それは記憶のプロトコルを“書き換えるための鍵”なんだ」

「記憶の……?」

「君は何かを答えた。選択肢を、文末を、思考を……そうしてLAPISは“君という存在”の輪郭を上書きしていく」

その言葉が意味するものの恐ろしさに、美佳は一歩引いた。

(私……自分の記憶を、自分の意思で、書き換えられてたってこと?)

「──でも、なぜ私に?」

「……君は“第0区画”の出身だからさ。

LAPISの試験的導入が行われていた、特別なクラスだった」

「第0……?」

美佳の頭に、一瞬だけ、誰かの泣き声がよぎった。

制服の胸元に記された「0」のバッジ。そして、校舎の地下、真っ白な壁とノイズ混じりの電光掲示。

「今夜、もう一度来てほしい場所がある。君の記憶の“継ぎ目”を、見つけ出すために」

朝倉が差し出したのは、旧校舎の鍵だった。

錆びた金属。深い藍色。手の中で、まるで心臓のように脈打つ感覚がした。

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